嘘つきな天使
新しい未来へ飛び立とう。
■新しい未来へ飛び立とう。
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それから三か月後。
「わぁ!見晴らし最高!お部屋も広くてきれいだし家具も高そう!」
天真が”貸倉庫”と呼んでいたのは、実は天真の別宅で都会のタワマンの一室だった。私はここ三か月この部屋と天真の病院の家を行ったり来たりしている
私だって知らなかったよ、この部屋の存在。天真がここに私を移すつもりだったことも聞いてなかったし。何せ24時間警備の目的なのか入り口エントランスにはコンシェルジュがいるし、確かに安全っちゃ安全だけど。あの人一々スケールがでかいのよ。
今、そこに由佳が遊びに来ている。
「彩未もこれでセレブの仲間入りだね~♪知坂で手を打ってたら今頃地獄だったよ」むふふ、と笑う由佳に思わず苦笑で返すしかなかった。由佳は加納くんに浮気されていた、と言う事実からすっかり立ち直ったようで安心した。
その後の二人は、由佳からのまた聞きだけど西園寺刑事さんの話に寄ると、莉里ちゃんは由佳に対する暴行罪教唆で逮捕、起訴、そして加納くんは会社を自主退職。同じ職場で浮気した挙句、彼女を襲わせる計画を立てたと言う噂はあっという間に広がったみたいだ。居づらかったに違いない。今は連絡すらしてないらしいから加納くんが何をしているのか由佳も知らない、と言う。
そんな噂の中、結局由佳も居づらくなっちゃって会社を辞めて今は家の近所の本屋さんでアルバイト暮らし。
何で由佳がそんな目に遭わなきゃならないのよ!と言ってやりたいことはたくさんあったけど。
「いいな~こんな広いお部屋。私なんて引っ越し先1Kだよ。もうここら辺の家賃てどーなってるの!」と由佳は喚く。
確かに、加納くんと同棲してたあのマンションには暮らしたくないよね。
「私は何だかこっちが落ち着かなくて、あの病院の家の方がいい」
「ええー!こんな素敵な家よりも?」
「分相応って言葉があるでしょ?私にはあっちの方が合ってるの」
あの少し狭いベッドで天真と抱き合って眠る方が好きなんだ。狭いキッチンで作るお粗末な手料理を食べながら、天真は毎回どんな料理でも頬がとろけそうなぐらいおいしく食べてくれてそれを見るのが好きで、くだらない話をして笑い合って、時々子供のようにじゃれ合って。
「ところで相談って何?」ローズヒップティーを入れながら由佳を見ると
「んー、相談って言うか報告?」
報告?
由佳はお腹の辺りを優しく撫でながら
「実は、できたの」
ドバドバ!淹れていた筈のローズヒップティーがカップからあふれ出す。ガラス製のローテーブルに鮮やかなピンク色をした液体が広がった。それはまるで恋の色??
由佳に新しい恋!!?
「わぁ!」
「もう何やってるのー、見た目や生活が変わってもやっぱ彩未は彩未だね」と由佳が笑った。
「てか相手誰!?」まさか加納くんとよりを戻したの!?てかさっき何やってるのか知らないって言ってたよね??
と聞きたかったが由佳は顔を赤くしてもじもじと手を組み
「西園寺さん」
はぁーーーー!?
あの二人いつの間にそんな関係に!?