嘘つきな天使
色々驚かされたけれど、壊れたメガネに特に思い入れはない。メガネ屋さんで安売りしているメガネを買っただけでその後買い替えるのが面倒でここまできたし。
コンタクト代も天真が払ってくれた。
「わ、悪いよ、流石に」と言って天真の腕を引くと天真はにやりと笑い
「じゃー、出世払いってことで。明日からきっちり働いてもらうからな~」と怖いことを言い出す。
こ、怖い。私何やらされるんだろ……
不安を押し隠しつつも天真の車で藤堂産婦人科に戻り、天真はすぐに私にシャワーを勧めた。
何故に?
もしかしてこれからまた一戦!?と両肩を抱いていると
「服、汚れてるだろ?それに一応傷の手あてをしたっていっても傷口をもう一度洗い直した方がいい」と言われ、私は小さく頷いた。
医者が言うんだから従った方がいいだろう。
そう言うわけでシャワーを借りると(バスルームは小さなバスタブと勢いのあるシャワーがある)天真の言う通り何だか身も心もさっぱりした気分になった。
スウェットにパーカと言う恰好で出ると
「ちょうど飯の準備ができた」と言い小さなダイニングテーブルに乗せられていたのはどこかの店で頼んであろう総菜の数々とピザ??
「って言ってもデリバリーだけどね。こいつ、料理全然ダメだから」との声に私は一瞬後ずさりしたくなった。
さ、西園寺刑事さん!!?が何で!全然気配しなかったよ!
「いやー、ホントは病院まで出向くつもりだったんだ。立派な暴行事件だからね。でもこいつが来るなって」
と西園寺刑事さんは天真を親指で指さし。
「言っただろ、お前が動けば向こうがどうでるか分からないって。でもここなら安全だ」
「診断書とかある?もしあるなら被害届とか出した方がいいよ」と西園寺刑事はビールの缶に口を付けのんびり。
「い、いえ……診断書は頼めば書いてくれますけれどこれ以上おおごとにしたくないって言うか…」
「賢明な判断だな。ここで騒ぎ立てるとまた”A”が狙ってくる可能性もある」
天真の言葉に私はごくりと喉を鳴らした。
てか天真……やっぱり”A”のこと知ってるんじゃ―――
「じゃー、僕は金田さんの方の様子を見てくるヨ。ま、奴らにしっぽを掴まれない程度に慎重にやるから安心しな」とピザ生地についた粉をパンパンと手で払って西園寺刑事さんが腰を上げた。
「あ、あの…!色々ありがとうございます!由佳のことお願いします」と頭を下げると
「金田さんの件は任せておいてよ。彼女に指一本触れさせないよう見張ってるから」と西園寺刑事さんの言葉にほっと胸を撫でおろした。