嘘つきな天使
つ、疲れた……
受付のカウンター席でテーブルに突っ伏しほぼ魂が抜けた状態の私に
「初日は大変だったでしょ」と香坂さんがカフェオレのペットボトルを差し入れしてくれた。
「す、すみません!」条件反射で慌てて起き上がると、香坂さんは「ふふっ」と笑った。
「流石は藤堂先生が認めただけな子だけあるわね」と言った。
「え?」
「先生ね、ああ見えて人を見る目めちゃめちゃ厳しいの。今までも何人も面接に来たけどこの前寿退社した子以外全員ボツ」と香坂さんは苦い顔をした。
「まぁ見た目より大変な仕事だからね~、あなたしっかりしてるし真面目だし覚え早いしちゃんと資格取ったら雑用以外こなせるわよ」と香坂さんは笑った。覚えが早いと言われたことは嬉しかったが、覚えないと追い付けないんだよ!
ははっ……
ちゃんと資格取ったらッて、これ以上大変になるっていうの?無理……無理無理無理!
「午後からの診察時間まで時間あるし上に行って休憩しっかりとってきなさいよ」
「え…上って…」この人どこまで知ってるの?と探るように目を上げると香坂さんは目をぱちぱち。
「一緒に住んでるんでしょ?先生と」
「す、住んでるって言うか!単なる居候でして!お金貯めたら家探して出ていくつもりです!」と慌てて弁明すると
「あら、なかなか癖のある”あの”藤堂先生と一緒に暮らせるなんて相当な強者だと思ってたけど」
まぁ、癖は強いな。
「でも、すごくいい人です」
私が言うと、香坂さんはふふっと笑った。
「そうなのよ、患者さん思いのいい先生。ちゃんと見抜けてるってことは人を見る目があるみたいね。良く見たら麻生さんきれいな目してるし」
き、きれいな目―――!?
「ええ、濁りのないまっすぐな目。先生はそこも見抜いたのね。ほら、早く休んできなさい。午後も大変よ」と私は香坂さんに背を押され二階へと昇らされた。