嘘つきな天使
プロデュース大作戦。

■プロデュース大作戦。

それから一週間経った。

由佳は三日前に退院して今は家で自宅療養中。相変わらず刑事さん二人が由佳の部屋の前に突っ立っていたからちょっと怖かったけど。何回か自宅にも行ったが由佳は日に日に元気になっていった。顔色も元に戻りつつ来月には復職すると聞いたときは安心した。

今日は木曜日。

待ってました!

木曜日の午後は病院が休診になる日。

一週間、病院の雑務に追われ、香坂さんに叱られながらも何とかこなした。休憩時間の合間と土曜日午後と日曜日の休診日は天真とトレーニング。こっちはだいぶ形になったかな…?

今日だけはトレーニングを休んで寝るぞ!と決めていたけれど

「行きたいとこがある、付き合ってくれ」と天真に無理やり引っ張り出された。

嘘!今日こそ家でごろごろする予定だったのに~!(泣)

天真が付き合って欲しいと言った場所は

「美容室?」しかも私が通う地元紙のクーポン付の安い美容室じゃなくていかにもおっしゃれーで高そうな。私とは縁がない場所。

まー確かに天真のボサボサ髪は気になってたけど、美容室ぐらい一人で行ってよ、と心の中でブツブツ唱えていると

「どうぞ~麻生様ですね。お待ちしてました」と美容室の椅子に座らされたのは、私!?

「いや、あの。私髪切る予定なんてなくて」と必死に説明するも「どんな感じがいいですか?きれいに伸ばしてるから揃えるぐらい?」と美容師さん(男性)は私の話全然聞いてないし。

私の背後に立った天真がニヤリと笑い

「こいつはプロのヘアメイクだ。髪切ってついでにメイクもしてもらおう」なんて言い出した。

め、メイク!?ここ29年間無縁だったのに。

「大丈夫だ、腕は確かだ」と天真が私の顔を鏡越しに覗き込み、私は顔をひきつらせた。

「彩未をプロデュース作戦開始だ」と天真はにこにこ。ゆ、由佳の言葉を真に受けたってわけ!?

由佳~~~!余計なこと言わないでよ!

最初は戸惑ったものの、もうここまで来たら腹をくくるしかない。

「パーマをかけて雰囲気変えてみるのはどうかな」と美容師さんが私の髪を触りながら真剣に悩んでいる。

「いえ、バッサリいっちゃってください。ミディアムボブぐらい」

思い切って言うと

「イマドキ失恋で髪を切るなんて流行らないぞ」と天真が腕を組む。

うっさい!あんたが言ったんでしょ!ボブが好きって。それ以前に―――私は


変わりたい。
< 52 / 117 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop