嘘つきな天使
「あー、言いたい事やりたい事できたから今日はもうここでいいわ、行こう天真」
「そうだな、彩未が満足したならそれでいっか」と言い天真はテーブルに乗せられた伝票を手に取り
「邪魔した分今日の支払いはここは俺がするよ。堅実家の知坂クン」と知坂の肩を天真が叩くと、知坂がわなわなと肩を震わせ、しかしそれ以上の反撃の言葉が思い浮かばなかったのか席を立つことはなかった。
「お二人ともすっごくお似合いのカップルだわ。お幸せに。もう二度と会うことがないけどね。ごきげんよう」
と笑ってやると二人は俯いたまま肩を落とし項垂れていた。
言葉通り店の支払いは天真がしてくれた。
店を出たところで私たちはハイタッチ。
「びっくり!天真に教えてもらったのがそのまま役に立ったよ!」
「彩未の努力の成果だ」
私たちは子供のように抱き合ってぴょんぴょん飛び跳ねた。
「あー!スッキリした!」
これでかんっぜんに知坂のこと忘れられそうだ。
「ね、そう言えばあの浮気女と天真二人きりになったときあったでしょ?キマヅクなかった?」と聞くと
「キマヅイ?っていうか口説かれた。知坂とは別れるから付き合ってくれないかって」
知坂も知坂だがあの女もあの女だ。知坂よりはるかにスペックの高い天真に早速乗り換えようっての?天真があんな軽い女に引っかかるもんですか。
案の定「かたーくお断りしておいたけど?『おたくみたいな浮気性の女、信用できない』ってね」と天真は膝の上でついた肘の上に乗せた顔を傾けにやり。
「あはは!いいざまぁ。さぞプライドが傷ついたでしょうね」
だから天真をお手洗いから戻ってきたとき、二人ともふてくされてたんだ。
「サイコーの夜だったわ」
二人でタクシーで天真の家に帰りつき、私たちは示し合わせたわけでもなくきつく抱き合いキスを交わした。
「これって俺に報酬ってこと?」天真に聞かれ
「バカ」私は天真を睨んだ。
抱きしめあったまま天真はくるりと私を前に向け、背中のワンピースのファスナーがある辺りに顔を近づけている。
子供じゃないんだし、これから先のことが予想できるけど
「天真、服片付けないと皺になるよ」
「そしたらまた買えばいい」
出たよ、おぼっちゃま発言。
「いい女がいい服を着ていると脱がしたくなるのが男のサガだ」天真はジッパーを口に含むとそれを下げた。
天真の口によって下ろされたジッパーは下まで下ろされ、ストンと私の足元にワンピースが落ちた。
下着姿になった私を天真はベッドへと促しつつ
「今日は黒?こないだは天使みたいだったけど今日は子悪魔チックだな」と天真はどこか楽しそう。私は天真の首に自身の腕を巻き付け
「悪魔になれたかな、今日の私」
「魅力的過ぎるぐらい、魂を抜かれてもいいと思うぐらいの悪魔っぷりだったぜ」
天真も自身もジャケットやベスト、ネクタイを緩める。何だか一連の動作が酷くスローに見えてじれったくなり私は天真のワイシャツのボタンに手をかけると天真が服を脱ぐのをやや荒っぽい手つきで手伝った。
露わになった天真の相変わらず筋肉質の胸元に顔を埋め匂いをかぐとボディーソープの香りに交じってほんの爽やかな天真の汗の香りが香ってきた。
それだけですごく安心したし高揚もする。