天敵スズメバチ王と政略結婚しましたが、食べられそうなのは私の心です 〜溺れるのは蜜か毒か〜
カミリアはとっさに腰に下げた蜜壺へ
手を伸ばし――
「食らいなさいッ!!」
ブンッ!!
彼女の手から放たれたのは、
蜜で固めた金色の塊――
蝶が艶舞していた花畑で密かに作った
花粉団子だった。
「う゛あ゛ッ……!?」
カマキリ女の顔面に直撃した。
血走った複眼が、ねっとりと甘い花粉まみれになる。
「――がぁッ、なんなのこれ!? 目が……!!」
ぬめった蜜が触覚や口元をまとわりつき、息が詰まる。
カマキリがたじろいだ、その隙に――
「今だッ!」
アザレオが腕を突き上げ、のしかかる鎌を全力で剣で弾く!
「――らァッ!!」
鋭い一閃。
カマキリ女の鎌が火花を散らして弾かれる。
「――っのォォ……ッ!!!」
よろめきながら、カマキリ女が咆哮した。
「貴様ァァァ……!!!」
花粉をぬぐいながら、背中の翅をバッと広げ威嚇する。
鎌をブンッと振り回すたびに、空気が鋭く裂ける。
「殺す……!! 貴様ら、殺して喰らってやるッ!!」
血走った複眼。
ふるえる触覚。
理性のカケラもなく、飢えた母獣がカミリアを睨みつけ――
(――こっちに来る!)
心臓がバクバクと悲鳴を上げた。