MYSTIQUE
A Star Is Born
「ここだよ、俺の家」
 屋敷の表札には、本荘と書かれてある。
「凄い⋯⋯!大邸宅ですね」
「ここまで広くなくてもいいと思うけどね、俺としては。上がって」
「お、おじゃまします⋯⋯」
 和洋折衷の広い屋敷の中を、
「ここが、客間。あっちにお客さん用のトイレと風呂もあるから、自由に使って」
 淡々と案内されるが、一郎は戸惑ってばかりだった。
「何かあれば、いつでも声かけてくれて構わないから。とりあえず、風呂に入ったら?」
「ありがとうございます⋯⋯」
 一郎は、施設の複数人用の風呂か、アパートのシャワー室ぐらいしか知らないので、一人でこんなに広い浴室を使うことなど、初めてのことだった。
(なんだか、夢の世界みたい⋯⋯)
 ふと、あまり長風呂しても申し訳ないと思い、慌てて上がると、立派なリビングでは青年が紅茶を飲みながら、科学雑誌を読んでいた。
「お風呂、ありがとうございました」
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