MYSTIQUE
La Isla Bonita
海も空も、境目がわからないほど、果てしなく青く澄んでいる。
二月上旬。
日本では最も寒い時期だが、東京から遥か南に存在するこの島には、冬がない。
本荘由利は、“天国にいちばん近い島”を口ずさみながら自転車を走らせる。
(天国にいちばん近い島は、私にとってはニューカレドニアではなく、ここなのよね⋯⋯)
そう感じながら、店舗兼自宅に戻った。
「ただいま!」
店番をする夫の新に声をかけると、
「おかえり。目、大丈夫だったか?」
そう言って、夫は愛しい妻の顔を覗き込む。
「うん。ただのものもらいだって」
「疲れてるのかもしれないな⋯⋯明日は店、休みにしようか」
「そんな、大丈夫よ!」
誰もいないパン屋の店内でそんな会話をしていると、
「ちわぁ」
常連客の男がやってきた。
「いらっしゃい」
新が言うと、
「おお、レアキャラの奥さん!いやぁ⋯⋯久々に見たけど、本当に綺麗だねぇ」
二月上旬。
日本では最も寒い時期だが、東京から遥か南に存在するこの島には、冬がない。
本荘由利は、“天国にいちばん近い島”を口ずさみながら自転車を走らせる。
(天国にいちばん近い島は、私にとってはニューカレドニアではなく、ここなのよね⋯⋯)
そう感じながら、店舗兼自宅に戻った。
「ただいま!」
店番をする夫の新に声をかけると、
「おかえり。目、大丈夫だったか?」
そう言って、夫は愛しい妻の顔を覗き込む。
「うん。ただのものもらいだって」
「疲れてるのかもしれないな⋯⋯明日は店、休みにしようか」
「そんな、大丈夫よ!」
誰もいないパン屋の店内でそんな会話をしていると、
「ちわぁ」
常連客の男がやってきた。
「いらっしゃい」
新が言うと、
「おお、レアキャラの奥さん!いやぁ⋯⋯久々に見たけど、本当に綺麗だねぇ」