MYSTIQUE
常連客は、実に嬉しそうに言う。
「由利、奥に行ってていいよ」
新が妻の耳元でそっと囁くと、由利は客に優しく微笑み、
「いつもありがとうございます。では⋯⋯」
そう言って、店の奥へと退散した。
「えー⋯⋯せっかく久々にお目にかかれたのに、もう?」
客は、露骨に残念がる。
「吉田さん。妻のことをあんまりジロジロ見ると、お金とりますよ?」
接客をしている割に、寡黙な新の放つ言葉は、何処からが冗談で、何処までが本気なのか、わかりにくいと言われている。
「しかしねぇ、あんな綺麗な奥さんが接客じゃなく裏方だなんて、残念だよ」
吉田と呼ばれた客がぼやく。
「妻はパン職人なんだから、仕方ないじゃないですか」
「そりゃそうだ。奥さんの焼くパンは本当に美味いもんね。でもさ、あれほどの美人さんだったら、もっと表に出たほうが店は繁盛するよぉ?」
「充分、繁盛してますから。ご心配なく」
「由利、奥に行ってていいよ」
新が妻の耳元でそっと囁くと、由利は客に優しく微笑み、
「いつもありがとうございます。では⋯⋯」
そう言って、店の奥へと退散した。
「えー⋯⋯せっかく久々にお目にかかれたのに、もう?」
客は、露骨に残念がる。
「吉田さん。妻のことをあんまりジロジロ見ると、お金とりますよ?」
接客をしている割に、寡黙な新の放つ言葉は、何処からが冗談で、何処までが本気なのか、わかりにくいと言われている。
「しかしねぇ、あんな綺麗な奥さんが接客じゃなく裏方だなんて、残念だよ」
吉田と呼ばれた客がぼやく。
「妻はパン職人なんだから、仕方ないじゃないですか」
「そりゃそうだ。奥さんの焼くパンは本当に美味いもんね。でもさ、あれほどの美人さんだったら、もっと表に出たほうが店は繁盛するよぉ?」
「充分、繁盛してますから。ご心配なく」