竜王の歌姫
第二章

出会い

豊かな花たちが咲き誇る中庭を歩くカノンは、青天から差し込む日差しの眩しさに目を細めた。

どこまでも続く広大な敷地は、神殿のそれとは比べ物にならない。
それもそのはず、ここはこの国で最も尊い場所―――竜王の住まう城なのだから。


歌姫として城に招待されたルーシーには、それに見合う待遇が用意されていた。
広く豪華な部屋に、身の回りの世話をする侍女。
そしてカノンと取り巻き2人も、侍女の一員として働くことになった。

しかし今、仕事をしているのはカノンただ1人。
そんなカノンの頭に浮かぶのは今朝のこと。

「それじゃあカノン、あとはいつもの通りよろしくね」
「サボったら承知しないわよ。仕事が終わらなくて何か言われるのは私たちなんだからね」

そう言って慣れた様子で仕事を押し付けていった取り巻きの2人―――アリサとユウミ。

2人はカノンの返事も待たず、神殿にいる時よりももっと豪華で優美なドレスに身を包んだルーシーのことを追いかけていった。

「ルーシー様、今日もギルバート様に会いに行くんですか?」
「きっとギルバート様も心待ちにしているはずですよ!」

結局、どこにいても私のやることは変わらない―――カノンは人知れずため息をついた。
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