竜王の歌姫
すると少し離れた場所にいたはずのケインが、ずんずんとこちらへ向かってくるものだから、カノンは慌てる。
そしてカノンの前で立ち止まったケインは、開口一番に言い放った。
「アナタ、その髪美しくないわね」
ケインが指し示したのは、カノンの長く伸ばした前髪だった。
「まだ時間はあるし、1人くらいなら……そうね」
ケインはカノンのことをじっと見つめながらぶつぶつと呟いた後、ひとりでに頷いた。
「ねえ、アタシに委ねてみない?
きっとアナタを生まれ変わらせてみせるわ」
突然の提案に、カノンは目を瞬かせる。
「いいじゃない、カノン!
せっかくだから切ってもらいなよ!」
横からマーガレットが勧めてくる。
カノンは自分の長い前髪に触れた。
カノンが目を覆い隠す程前髪を長く垂らしているのは、ルーシーの命令によるものだ。
味方もいない環境で長年虐げられ続けることで、いつしか抵抗することを諦めて、
感情さえも麻痺しているようにされるがままだった。
けれど、他者から与えられる優しさと自分の存在を認めて貰える喜びを思い出した、今は。
そんな自分を変えたいと思う。
ルーシーの言いなりになる自分は、もう嫌だった。
「嫌なら無理強いはしないけど……どうする?」
“是非、お願いします“
まずは、第一歩。
そしてカノンの前で立ち止まったケインは、開口一番に言い放った。
「アナタ、その髪美しくないわね」
ケインが指し示したのは、カノンの長く伸ばした前髪だった。
「まだ時間はあるし、1人くらいなら……そうね」
ケインはカノンのことをじっと見つめながらぶつぶつと呟いた後、ひとりでに頷いた。
「ねえ、アタシに委ねてみない?
きっとアナタを生まれ変わらせてみせるわ」
突然の提案に、カノンは目を瞬かせる。
「いいじゃない、カノン!
せっかくだから切ってもらいなよ!」
横からマーガレットが勧めてくる。
カノンは自分の長い前髪に触れた。
カノンが目を覆い隠す程前髪を長く垂らしているのは、ルーシーの命令によるものだ。
味方もいない環境で長年虐げられ続けることで、いつしか抵抗することを諦めて、
感情さえも麻痺しているようにされるがままだった。
けれど、他者から与えられる優しさと自分の存在を認めて貰える喜びを思い出した、今は。
そんな自分を変えたいと思う。
ルーシーの言いなりになる自分は、もう嫌だった。
「嫌なら無理強いはしないけど……どうする?」
“是非、お願いします“
まずは、第一歩。