竜王の歌姫
side:ルーシー
アイツ、なんで勝手に私の命令を破ってるわけ……!?
やっと謹慎がとけたルーシーが目にしたのは、伸ばしたままでいろと言いつけたはずの前髪を切り、素顔をさらけ出したカノンの姿だった。
それを見た瞬間頭に血が上り、すぐにでも問い詰めにいきたかった。
けれど、カノンはいつの間にかラースの専属侍女にもなっていて。
以前ラースと揉めたことも相成って、おいそれと近づけなくなっていた。
そんな中で、聞こえてきた噂話。
「なあ、さっきあの人間の……カノンって子可愛くね?
なんか普通にタイプかも」
「あー確かにいいよな」
聞き捨てならない言葉に、ルーシーは立ち止まって聞き耳を立てる。
あの女が人から褒められていることが、たまらなく不快でしょうがなかった。
「例の歌姫様もさ、顔はまあいいんだけど……性格最悪らしいしな」
「何なら顔だけが取り柄の歌姫様、顔だけでも負けそうだな」
―――は?
噂をしていた男たちが去っていっても、ルーシーは立ち尽くしたままでいた。
気に食わない。気に食わない気に食わない……!!
どこまでも目障りな女。
ガリガリと噛みちぎるほどに爪を噛む。
ルーシーが謹慎中だったのをいいことにつけ上がりやがって。
どうにかして、またあの女を甚振ってやりたい。
けれど手駒はもう使えない。
それに謹慎があけてから、ルーシーに対する周囲の目は一段と厳しくなっているし。
何かあったらすぐにギルバートに報告されるに違いない。
思うように動けない苛立ちに、ルーシーは頭を掻き毟る。
そして、仄暗い瞳で呟くのだった。
「いっそ、殺してやりたい」
やっと謹慎がとけたルーシーが目にしたのは、伸ばしたままでいろと言いつけたはずの前髪を切り、素顔をさらけ出したカノンの姿だった。
それを見た瞬間頭に血が上り、すぐにでも問い詰めにいきたかった。
けれど、カノンはいつの間にかラースの専属侍女にもなっていて。
以前ラースと揉めたことも相成って、おいそれと近づけなくなっていた。
そんな中で、聞こえてきた噂話。
「なあ、さっきあの人間の……カノンって子可愛くね?
なんか普通にタイプかも」
「あー確かにいいよな」
聞き捨てならない言葉に、ルーシーは立ち止まって聞き耳を立てる。
あの女が人から褒められていることが、たまらなく不快でしょうがなかった。
「例の歌姫様もさ、顔はまあいいんだけど……性格最悪らしいしな」
「何なら顔だけが取り柄の歌姫様、顔だけでも負けそうだな」
―――は?
噂をしていた男たちが去っていっても、ルーシーは立ち尽くしたままでいた。
気に食わない。気に食わない気に食わない……!!
どこまでも目障りな女。
ガリガリと噛みちぎるほどに爪を噛む。
ルーシーが謹慎中だったのをいいことにつけ上がりやがって。
どうにかして、またあの女を甚振ってやりたい。
けれど手駒はもう使えない。
それに謹慎があけてから、ルーシーに対する周囲の目は一段と厳しくなっているし。
何かあったらすぐにギルバートに報告されるに違いない。
思うように動けない苛立ちに、ルーシーは頭を掻き毟る。
そして、仄暗い瞳で呟くのだった。
「いっそ、殺してやりたい」