星屑より君へ

赤い軌道

〈RX-Λ〉の初出撃から数日。コロニー内では、連邦軍の戦果報告が静かに広がっていた。

「たった一機で敵部隊を殲滅したらしい」

「パイロットは若い少年だって……ニュータイプかもって噂だよ」

アヤはその噂を耳にするたび、胸がざわめいた。あの日、彼の意識が自分に届いた感覚は、夢でも幻でもなかった。確かに、ふたりは繋がっていた。

その夜、アヤは再び夢を見る。

宇宙の闇を切り裂く赤い軌道。〈RX-Λ〉が敵機と交差する瞬間、レイの声が響く。

『君の声が、俺の軌道を導いてくれる』

目覚めたアヤは、涙を流していた。それは恐怖ではなく、確信だった。自分の中に眠る力が、彼と共鳴している。

翌日、〈ノクターン〉の隊長・カレン・ヴァルツがアヤを呼び出す。

「君の存在は、偶然ではない。レイの戦闘記録には、通常ではありえない反応速度が記録されていた。彼は、君の声を“聞いて”いたと言っている」

アヤは黙ってうつむいた。だが、カレンは優しく言った。

「ニュータイプは、戦うための存在じゃない。君たちは、未来を“感じる”力を持っている。だからこそ、私は君に提案したい。〈RX-Λ〉の副操縦席に乗ってみないか?」

その言葉に、アヤの心は揺れた。戦うことへの恐怖。だが、レイの孤独に寄り添いたいという想いが、それを上回った。

「……私が乗ることで、彼を守れるなら」

カレンは静かに頷いた。

その夜、アヤは格納庫で〈RX-Λ〉を見上げる。白銀の機体は、まるで彼女を待っているかのように静かに佇んでいた。

レイが現れる。

「君が隣にいてくれるなら、俺は迷わない」

ふたりは、言葉を交わさずに見つめ合う。心の音が、静かに重なっていく。

そして、次の出撃が決まる。

今度は、ふたりで。
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