星屑より君へ

二人のコックピット

出撃前の格納庫。〈RX-Λ〉の機体は、静かに待っていた。

アヤは副操縦席に座るのも、もう二度目だった。だが今回は、正式な任務としての出撃。彼女の心は、緊張と決意で満ちていた。

レイは隣でスーツのグローブを締めながら、ふと目を向ける。

「君の声が、俺の中にある。それだけで、迷わない」

アヤは頷いた。ふたりの間には、もう言葉はいらなかった。

出撃命令が下る。今回の任務は、敵勢力が占拠した資源衛星の奪還。敵は旧型MSを多数配備しており、地形的にも不利な戦場だった。

〈RX-Λ〉が発進する。宇宙の静寂を切り裂く軌道。ふたりの意識は、すでに融合していた。

「敵、左上方。遮蔽物の影に三機」

「了解。回避軌道、君に任せる」

アヤが操縦補助を行い、レイが攻撃を指示する。ふたりの動きは、まるで一つの生命体のようだった。

敵機が一斉に攻撃を仕掛けてくる。だが、〈RX-Λ〉は回避と反撃を同時に行い、次々に敵を撃破していく。

その様子を、艦内のモニターで見ていたカレンは、息を呑んだ。

「……これは、もはや操縦ではない。共鳴による“直感戦術”だ」

だが、戦闘の最中、敵の一機が自爆装置を起動し、資源衛星ごと破壊しようとする。

「レイ、止めなきゃ……!」

「間に合わない……いや、君なら届く」

アヤは目を閉じた。意識を集中する。敵機のパイロットの“恐怖”が、心に流れ込んでくる。

『誰か……助けて……!』

その声に、アヤは応えた。

「やめて。あなたも、誰かに守られたかったんでしょう?」

その瞬間、敵機の自爆装置が停止する。〈RX-Λ〉の共鳴粒子が、敵機の制御系に干渉したのだった。

戦闘は終わった。

帰還したふたりを、艦内の隊員たちは静かに見つめていた。敬意と、畏怖と、そして希望の眼差し。

レイはアヤに言った。

「君が隣にいるだけで、俺は人間でいられる」

アヤは微笑んだ。

「私も。あなたがいるから、戦える」

その言葉は、ふたりの絆を確かにした。

だがその裏で、軍上層部は動き始めていた。

「〈RX-Λ〉の性能は、ニュータイプ同士の共鳴によって最大化される。だが……制御不能の可能性もある」

「必要なら、排除も視野に」

ふたりの奇跡は、希望であると同時に、脅威でもあった。
< 6 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop