いつか、桜の季節に 出逢えたら

第10話 1月23日 一緒にゲーム

「紫苑くんてさ、いつも部屋に籠っているけど、何してるの? いつも眠そうだし」

学校の帰り道、いつも気になっていたことを聞いてみる。

「あー、お前、記憶ないもんな……どうせ否定するから、教えない」

紫苑は、いつもの無表情でそっけなく返す。

「えー、何? 人の趣味を否定したりはしないよ!……で、何してるの?」

紫苑は、言うか言わないか少しだけ考えた後、ぽつりと言った。

「……ゲーム。今は、ハンモンかな」

「ハンモンって、あのハンモン!? 紫苑くん、やってるの?」

ハンモンというのは、ギルドに所属しているハンターが、襲いくるモンスターを倒していく、アクションゲーム【Hunters of Monster】の略称のこと。

「私もやりたい! 紫苑くんの部屋に行っていい?」

「……お前、ゲーマーを蔑んでいたよね? 何か企んでる?」

想定外の返答だったのか、私を信用できないのか、訝しげな表情だ。

「ふふふ、私……多分、強いよ?」

「やったことないのに?」

「私にはわかる、私は強い!」

「お? じゃ、やってみるか?」

二人並んで、玄関から早足で階段を昇り、紫苑の部屋に入った。
特に広くはない部屋に、PCデスク、ゲーミングモニター、ゲーミングチェアの圧倒的存在感。
あのヘッドホンは、ゲームをする時に使っていたんだな。

「THE・ゲーマーって感じの部屋だねぇ」

過去の私は嫌いだったようだが、今の私はこの感じ、嫌いではない。

「そっちは、別のゲームで使ってる。ハンモンは、こっち」

紫苑は、携帯ゲーム機を差し出す。
懐かしいなーーそうそう、私、このゲームをやりこんだ気がーーする?
一瞬、今、手の中にあるのとは違う色の携帯ゲーム機でプレイしている記憶が、一瞬見えた。

「三月に拡張版が出るから、その時は……どうした?」

急に黙り込んだ私に、不思議そうな顔で紫苑が声をかける。

「……紫苑くん、私、本当にこれ、やったことないの?」

「やったことがないどころか、触れたことすらないはずだけど?」

ーーいや、確かに、このゲームをやった気がする。
紫苑の知らないところで、やってた?
自分の記憶に違和感を覚える。
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