ぶーってよばないで!改訂版
【東京芸術大学 レッスン室(二日目)】
「ねえ、ぶー!もうピアノ弾きたくない!疲れたよ。」
ピアノに寄りかかりながらため息をつく瑛里。まだ二日目だというのに、どうしていつもこうなっちゃうのか。

「あと二日あるのに、大丈夫?瑛里。」
「無理。」
「またそんなこと言って。本宮門下生として恥ずかしくないように、しっかりやろうよ!ね?周ちゃん!」
「そうだよ、せっかく有名な先生に見てもらえるんだから。これも本宮門下生だからこそだよ。先生の顔に泥を塗るようなことは出来ないよ、瑛里ちゃん!」
周ちゃんが真剣な眼差しで瑛里をみる。

「周ちゃんの言う通り!瑛里、やる気出せそう?」
「うーん……無理。やだやだやだ、もうホテルに帰る!!」

ぷるる ぷるる。
「あれ?瑛里の携帯じゃない?鳴ってるよ。」
「……出ない。」
瑛里の携帯画面には【篤人くん】と表示されていた。
出なくていいの⁉︎ 何かあったのかな…。

「そうだ!じゃあ、瑛里ちゃんの元気が出るように!今日の夜は、みんなでマック食べてからホテルに帰ろうよ!」
「さすが周ちゃん!賛成!ホテルのそばにあったもんね!」
「でも……ぶー、ダイエットしてるんじゃないの?夜にマックなんて、さらにぶーになっちゃうじゃん。」
「瑛里ちゃん、何でそういう言い方するの?そんなの真瑠璃ちゃんに謝ってよ。」
周ちゃんが鋭い目で瑛里をにらむ。

「ふん。やだよ。そうやっていつもぶーの肩を持つんだからっっ。瑛里、全然楽しくない。」
「ありがとう、周ちゃん。大丈夫!マックで夜ご飯、大賛成だよ!瑛里は?」
「……行く。」
「やっぴー!そうこなくっちゃ!三人で二日目お疲れさま会だね、マックを楽しみに瑛里ちゃんファイト‼︎」

こうして私たちは、二日目をなんとか乗り切った。
まだ疲れは残っているけれど、残り二日もきっと大丈夫。

【三日目】
「ねえ、ぶー。もう帰りたい。疲れすぎて、ピアノの鍵盤が全部黒に見えるんだけど。」
瑛里はぐったり椅子に座り込む。
「もう三日目だよ!?あと一日頑張れば終わりだよ!」
私が励ますと、周ちゃんもすぐさま口をはさんだ。
「そうそう。瑛里ちゃん、昨日だって最後までやり切ったじゃん!ほら、今日もできるよ!」
「……も〜。周司って本当にうるさい。元気ありすぎて疲れる。」
ぶつぶつ言いながらも、結局きちんと最後まで弾き切る瑛里。
やっぱり瑛里は凄い。
文句は言うからだ、ピアノから絶対に逃げないもんね!



【最終日】
とうとう最終日。
三人で励まし合いながら頑張った成果か、大学の先生の言葉も少し柔らかくなったような気がした。
「皆さん、よく集中できていましたね。」
この一言で、ここまでの疲れが一気に吹き飛ぶ!

「ぶー!やっと終わったね!瑛里、もう自由だぁ〜!」
講習が終わるや否や、瑛里が叫んだ。
「自由って…瑛里は大げさなんだから。」
私が笑うと、横で周ちゃんが静かに呟いた。
「でも、本当に頑張ったよね。三人でここまで来られてよかった。」
その横顔は、なんだかちょっと大人っぽく、逞しく見えた。

「じゃあ!最後にプリクラ撮ろうよ!約束だよ!」
目をキラキラとさせながら瑛里が言う。
「行こう行こう!」
私と周ちゃんも笑顔で答えて、渋谷のゲームセンターに駆け込んだ。
「やっぴー!って、え!?なにこれ、すごい人!!」
「これじゃ新幹線に間に合わないよ。」
「やだやだ!撮りたい!瑛里、このために頑張った!」
瑛里は最後までぶつぶつ文句を言っていたけれど、またのお楽しみだね。

私はというと、しっかりお土産をゲットしたよ。
三人で食べた上野の有名店のあんみつを、東京駅でも買えると知ってギリギリ滑り込みセーフ。パパママ真子ちゃんへのお土産だよ!
また、『真瑠璃のグルメ日記』を書かなくちゃ。
それで……隆也に見てもらうんだ。

座席に座って、外を眺める。
疲れたけれど、とても濃くて充実した三泊四日だった。
きっと、これからの私たちにとって大きな宝物になるよね。
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