きみと、まるはだかの恋
「帰るぞ」
昴が一応、私に声をかけて踵を返す。すぐに彼の後を追うことができない私は、再びスマホの画面へと視線を落とす。
【星見里って最近観光地として人気が出てるってYouTubeで見たよ! ハナちゃん、もっと村での生活を教えて!】
Xに綴られたひとつの意見が目に飛び込んでくる。
「もっと教えて、か……」
去っていく昴の背中を見つめながら、その言葉を繰り返す。
教えて、と言われて黙っていられる私じゃない。
“ハナ”としての自分が、“波奈”をどんどん遠くへと置き去りにしていこうとしている。
昴が役場から完全に出ていくのを見届けてから、私は「ふう」と一息ついた。そして、Xの投稿画面に指を這わせる。
「教えてあげるよ。待ってるひとがいるなら」
誰にも聞こえないほどの小さい声なのに、しんと静まり返る役場の中で残響する。
結局私は一人なんだ。
一人でこの場所から発信するしかない。私が知る星見里の魅力、ここでの暮らし。都会にいる自分だからこそ感じることのできるささやかな命の輝きを。
昴の清潔な石鹸のような残り香を感じながら、投稿画面とにらめっこするのだった。
昴が一応、私に声をかけて踵を返す。すぐに彼の後を追うことができない私は、再びスマホの画面へと視線を落とす。
【星見里って最近観光地として人気が出てるってYouTubeで見たよ! ハナちゃん、もっと村での生活を教えて!】
Xに綴られたひとつの意見が目に飛び込んでくる。
「もっと教えて、か……」
去っていく昴の背中を見つめながら、その言葉を繰り返す。
教えて、と言われて黙っていられる私じゃない。
“ハナ”としての自分が、“波奈”をどんどん遠くへと置き去りにしていこうとしている。
昴が役場から完全に出ていくのを見届けてから、私は「ふう」と一息ついた。そして、Xの投稿画面に指を這わせる。
「教えてあげるよ。待ってるひとがいるなら」
誰にも聞こえないほどの小さい声なのに、しんと静まり返る役場の中で残響する。
結局私は一人なんだ。
一人でこの場所から発信するしかない。私が知る星見里の魅力、ここでの暮らし。都会にいる自分だからこそ感じることのできるささやかな命の輝きを。
昴の清潔な石鹸のような残り香を感じながら、投稿画面とにらめっこするのだった。