きみと、まるはだかの恋
 肯定的な意見が多く、ほっとした。
 久しぶりに、自分が「求められている」という感覚に満足しながら役場を後にする。昴は役場の前に止めた軽トラの前で空を見上げていた。

「待っててくれたんだ」

 てっきり怒って帰ってしまったかと思っていたので驚く。

「そりゃ、まあ。こんなところに女の子一人置いていけねーし」

 昴の口から“女の子”という言葉が出てきたところで、どきんと心臓が跳ねる。

「ほら、乗るぞ」

 唖然として立ち尽くしている私に、昴がそう声をかけた。

「う、うん」

 素直にありがとうって言えばいいのに。喉元まで出かかった言葉をどういうわけか飲み込んでしまう。
 ブオン、とエンジン音を立てて軽トラが発車した。役場から遠ざかるとWi-Fiが繋がらなくなり、インスタの「いいね」やコメントの通知が来なくなる。スマホをスリープ状態にした。

「東京での仕事はさ」

 不意に昴がつぶやく。運転をしているので、もちろん視線は前方へと注がれている。私は、昴の横顔を眺めながら「うん」と彼の言葉に耳を傾けた。

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