きみと、まるはだかの恋
 そして今日、十月十二日、日曜日。
 私は昴と、とあるりんご農園にやってきていた。
「ながしま農場」。あの、星見高原のロープウェイの受付をしている長嶋さんの家が運営している農場である。長嶋さんも、農家とロープウェイスタッフを兼任していた。

「ちーっす」

 私と昴が農場に顔を覗かせると、長嶋さんが軽い口調で片手を上げた。

「長嶋さん、今日はよろしくお願いします」

 昴が恭しく頭を下げるのにつられて、私も「よろしくお願いします」と挨拶をした。

「ちょうど今収穫時だからかなり甘いのが採れると思うよー。何個でも採ってよし! じゃあ楽しんで〜」

 特に収穫の仕方などの説明もなく、長嶋さんは小屋へと戻っていく。たぶん、相手が私と昴だからだろう。私たちのすぐ後にやってきた観光客には一から説明をしていた。

 緑の葉っぱの中に点々となっているりんごの木は緑と赤のコントラストが美しい。たくさん実がなっている木の下まで行って、昴が一つのりんごをひょいと掴む。

「これ、めちゃくちゃ甘そう。採ろうか」

「う、うん」

 りんご狩りなんていつぶりだろうか。小学生ぐらいの時に家族で行ったような気もするが、それ以来初めてな気がする。
 昴は真っ赤なりんごに手を添えて、少し傾けながら手首を少し捻った。ぷつん、とあっけなくりんごが枝から離れる。
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