きみと、まるはだかの恋
 すべてのテーブルの注文をし終えると、厨房に戻り、昴の手伝いをする。

「忙しいけど嬉しいね」

「ああ、そうだよな。まさかこんなにたくさん人が来てくれるなんて思ってなかったから」

「私のSNSの宣伝の効果じゃない?」

 わざとおどけるようにして言ってみると、昴がふっと目を細めて「そうだな」と私の頭にぽんと手を置いた。

「波奈のおかげだ。ありがとう」

 こんなに忙しいのに、私の頭を撫でてくれる昴にきゅんとときめきを覚えつつ、こほんと咳払いをして、「店長、仕事中ですよ?」とやんわりたしなめた。

「そうだった、そうだった。ほら、働こう」

 取り繕ったような指示がおかしくて、私はぷっと吹き出してしまった。
すべてのメニューにご飯、味噌汁、副菜がつくが、この三つはあらかじめ仕込んでいたので、冷めても美味しい副菜からトレーに乗せていく。昴がメインディッシュを作ったところで、ご飯と味噌汁をよそいつつ、出来上がったプレートからせっせと運んでいった。

「お待たせしました〜! “戸倉さん家のほくほく肉じゃが定食”、“星見里の星空カレー”三つ、でございます!」

 プラネタリウム席の三上さんと子どもたち三人に料理を出すと、子どもたちがわああと目を輝かせて喜んでくれた。

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