きみと、まるはだかの恋
「波奈ちゃんとか、昴くんのような若者がこんな素敵なカフェをつくってくれて私はすごく嬉しいのよ。正直私も、デジタルから隔離されたこの村の未来がちょっと心配でね。でもこうして、大人も子どもも楽しめる空間をつくってくれて、星見里の未来に希望が持てた。だからお礼を言うのはこっちのほう」

 三上さんが「ありがとうね」と言ってくれるのを聞いて、胸に熱く込み上げるものがあった。泣いちゃだめだと思うのに、目尻には勝手に涙が溜まっていく。部屋が暗くてよかった。紬ちゃんに、「波奈ちゃん泣いてるの?」と揶揄われなくて済む。

「本当に、ありがとうございます。今日は……いや、今日だけじゃなくて、何度でも『Dining Café 花と星』をお楽しみください」

「もちろん、何度も楽しませてもらうわ」

 優しく微笑んでくれた三上さんに再度頭を下げて、「すみませーん」と声を上げるお客さんのほうへと駆けていく。息をする間もないほど忙しい一日だったけれど、お世話になったたくさんのひとたち、新しくこの場所を知ってくれたひとたちに会うことができて、心はかつてないほど満たされていくのだった。
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