きみと、まるはだかの恋
 その後、仲良く『Dining café花と星』を経営しながら、インフルエンサーの仕事も続けていた。確かに東京にいた頃より仕事は減ってしまったけれど、それでも要望があれば東京に飛んで帰って依頼を受けた。そのおかげで、今も変わらずインフルエンサーとして働くことができている。
 それどころか、星見里の観光大使的な扱いを受け、“星見里といえばハナ”というような方程式がファンの頭の中で出来上がっていた。ありがたいことだ。

 それから二年が経ち、娘が生まれた。雲ひとつない晴天の日に生まれてきたから、思わず“美空”という名前をつけた。子どもが生まれた瞬間、自分の中でこの子を絶対に守るんだという強い意志が芽生えて、不思議な気分に包まれた。昴はずっと「ありがとう。波奈。これからよろしくな、美空」と言って私たちをまとめて抱きしめてくれていた。

 美空が小学一年生に成長した今、一緒に『Dining café花と星』の手伝いをしてくれている。まだまだ危なっかしいところはあるけれど、一生懸命仕事をしてくれる美空はお店の看板娘になりつつある。客足はオープンの時よりは落ち着いたものの、これまで廃れずに続いてくれて、仕入れ先にも、いつも来てくれる地域おこし協力隊のみなさんにも、観光客にも感謝しかなかった。

「波奈、美空、次もよろしく!」

 厨房から昴が私たちを呼んでいる。窓から吹き込む秋風が、店内の空気を自然の中に連れて行ってくれる。
 私は美空と顔を見合わせてニッと微笑むと、二人で大きく「「はい!」」と返事をした。


<了>
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