きみと、まるはだかの恋
「まずは農作物のご紹介から行きましょうか。星見里はお米はもちろんのこと、他にも果物や野菜なんかが育てやすい気候で、豊富に採れるんですよー」

 木川さんが私たちの隣に立って、星見里の案内を始めてくれた。推定六十代だけれど、全然老いを感じさせず、背筋もぴんと伸びてはきはきとしゃべってくれる。都会で生きていると、自分の両親ぐらいの年齢の方とあまりかかわることがないから、新鮮な気分だった。

 木川さんに連れられて、いくつもの農家を回った。その間も、雨がしとしとと降り続いていて、足元を濡らしていく。木川さんの話す声もちょっとだけ聴きとりづらかった。

「すごいですねー。村一面に田んぼや畑が敷き詰められているみたいで」

 素直な感想が口からこぼれ落ちる。想像はしていたけれど、辺り一面田畑がずらりと並んでいて、まさに芸術だった。晴れていたらきっと、黄金色の稲穂が風にさわさわと揺れて、ここでしか見られない風景が広がるのだろうな。

「そうでしょう。私たちはもう見慣れてしまいましたけれどね。都会のひとたちからすれば、珍しい光景だと思います。こういう自然の風景を、若いひとたちにも伝えていきたいんですよ」
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