きみと、まるはだかの恋
「そうなんだ。へえ、すげえじゃん。波奈、有名人なんだな」

 私の心配をよそに、昴は涼しい顔をして、本気で私のことを「すごい」と思ってくれているような口ぶりで褒めてくれた。
 嘘だ。
 こんなの昴じゃないって。 
 高校時代の彼は……確かに私のバスケの腕を褒めてくれたこともあったけれど、基本的にはお互いにバカにし合ったり、変なことをして笑わせ、笑い合ったり、まあつまるところ、同性の友達のように一緒にバカをやる存在だったのだ。
 そんな彼が、素直に私の仕事のことを褒めてくれるなんて。
 他のひとがいる手前ということもあるかもしれないけれど、私たちが離れて生きてきた時間の長さを思って、目がくらんだ。

「す、昴のほうは? ここで何してるの?」

「見ての通り、農作業だけど? ここでの仕事って言ったらほとんど農業だからなー」

 確かに彼は灰色のつなぎを着ていて、長靴まで履いている。農業をするひとにしか見えなかった。

「そうなんだ……昴が、農業」

「なんだよ、おかしいか?」

「うん。おかしい」

「失礼なやつだな! こう見えても俺、新人にしては上手くやってるんだぞ」
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