きみと、まるはだかの恋
「は、はい。彼は高校の同級生で……。でも、まさかこんなところで会うなんて思ってもいませんでした」

「俺のほうも。あ、すみません名乗っていませんでしたね。城山昴といいます。三年ぐらい前から星見里で暮らしています」

「それはそれは。『ベストツーリズム』のプロデューサーを務める北村(しげる)です」

「企画アシスタントの中井美里です」

『ベストツーリズム』のふたりが昴に向かって恭しく頭を下げる。その間も、私はぽかんとしたまま、目の前で起こっている出来事を信じられない気持ちで眺めていた。

「三年前から……」

 昴が星見里で暮らしている。
 昴とは高校卒業後会っていなかったから、どこで何をしているのかなんて、全然知らなかった。ふわっと風の噂では東京で建築系の仕事に就いたと聞いていた気がしたが、仕事はどうしたのだろうか。
 昴のほうも、私がインフルエンサーになっていることを知らないのか、「どうして波奈がここに? 波奈もお二人と同じ会社?」と聞いてきた。

「私は、フリーで活動しているの。主に美容とかコスメとかのインフルエンサーをしてる」

 昴に今の自分について伝えるのはいささか恥ずかしかった。曲がりなりにも初恋の相手だ。「インフルエンサーって、お前が?」なんて鼻で笑われてしまったらどうしよう……。
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