きみと、まるはだかの恋

第一章 見失っていく

「みなさんこんばんは〜。ハナです。やばいね、もう深夜一時なんだね。こんな夜中だけど誰か見てくれてるかな? あ、すごい。続々来てくれる。わーありがとう! もしかしてみんな明日学校やお仕事休みな感じ? いや、でもこんなにたくさんのひとがみんな休みなわけじゃないよね。『明日会社ですが最後まで見ます!』て、嬉しい〜ありがとう。でも無理はしないでね。睡眠っていちばん大事じゃん。最近めっちゃ感じるもん。夜更かしはお肌の大敵だよ! ……て、私がいちばん気をつけないといけないけどね」

 カーテンを閉め切って、部屋の明かりはばっちりとつけた状態。外の暗さと部屋の中の人工的な電気の明るさのギャップに、体内時計が狂っていく感じがする。それでもやめない。私の——“ハナ”の活動は今始まったばかりだから。
 インスタライブ、通称“インライ”は一週間に一度行っている。かなり高頻度なほうだと思う。美容、コスメのインフルエンサーとして活動し始めてからもう五年が経つ。最初の一、二年は全然知名度がなくて、売れてきたのはちょうど三年目ぐらいだろうか。その頃から、勤め先の広告会社での仕事に辟易としてきて、「会社を辞めたいなあ」とぼんやり考えていた。

 学生時代の友人である裕美(ゆみ)に相談してみたところ、「いっそのこと辞めたら? 背水の陣ってやつ」と、ご意見を頂戴した。チューハイとポテトチップスを片手に、である。私ももちろん、彼女と同じように右手にはビールを、左手にはチータラを持っていた。「裕美がそう言うなら〜そうしよっかなあ〜」と鼻歌なんかを歌いながら返事をした。それから、裕美が「あたしが書いてあげる」と面白おかしく笑いながら退職届を認めた。その届を翌日には上司に提出したのだが、最初は退職願を出すのが普通だとチクリと言われる羽目に。いや、今思えばなんの前触れもなく突然退職届を提出した私が100%悪い。だがもう退職の意思を固めた部下にこれ以上強く注意をする気力も残っていなかったのか、上司は渋々「もういい。退職希望日はいつだ」と淡々と事務手続きを始めていた。

 そういうわけで、無事に(?)退職することができた私は、晴れてフリーのインフルエンサーとしての活動を始めたわけだ。
 今では夜中にこうしてインスタライブをしても、五千人の視聴者が集まるほどに有名になってしまった。ありがたいことに。
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