きみと、まるはだかの恋
 考え得る解決策の中に「野宿」という言葉が浮かんできて、いやいやいやと、打ち消した。
 いくら田舎とはいえ、野宿なんて危険すぎる。そもそもやったことないし。テントも何も持っていないし。
 私が必死に考えあぐねていると、昴が「じゃあさ」と何の気なしにこう言った。

「俺の家に泊まれば?」

「はい?」

 空耳だろうか。さっきから、昴の発言に心が取り乱される。こんなに感情が大きく波打つのはいつぶりだろうか。

「昴、今なんて?」

「だからー、俺んちに泊まればいいじゃんって」

 やっぱり聞き間違いじゃなかった!
 信じられない気分で、昴をじーっと見つめる。彼は恥ずかしそうにちょっとだけ目を逸らしたものの、前言撤回まではしないつもりらしい。
 恋人同士でもない、いい歳した男女が一つ屋根の下で夜を明かす……?
 いやいや、さすがにそれはどうなのよ。
 曲がりなりにも、私にとって昴は初恋の相手だ。今は……まあ、その頃の気持ちはないけれど、それでも再会したばかりの初恋のひとの家に泊まるなんてそんな無謀なこと——。
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