きみと、まるはだかの恋
 お風呂はとても気持ち良かった。
 一日外にいたからだろうか。
 疲れた身体に熱いお湯が沁みる。湯船にたっぷり浸かったあとにお風呂から出ると、昴が居間のソファに座ってビールを飲んでいた。

「お風呂、ありがとう。気持ち良かったです」

「それは良かった。波奈も飲む?」

 昴が右手で缶ビールをひょいと持ち上げて私に見せる。どうしようかと一瞬迷ったものの、完全な答えを出す前に「うん」と頷いていた。
 昴が冷蔵庫から持ってきたビールはキンキンに冷えていて、お風呂上がりに飲むには最高すぎた。普段、夜は忙しくて晩酌をする間もない。実家で暮らしていたころ、父親がこうして夜にお酒を飲んでいた気持ちが今ならよく分かる。

「波奈、大きくなったよな〜」

 酔っているのか、ソファで隣に座る昴が、私の頭をぽんと撫でた。不意打ちの出来事に、身体がぴくんと跳ねる。

「な、なにを……!」

 大きくなった、なんて親戚のおじさんでもあるまいし。いったい何を言ってるんだろうか。

「大きくっていうか、でっかく? インフルエンサーなんて、想像もしてなかった。なんだか波奈が遠くに行っちまったなって……」

 普段の凛々しい表情はどこへやら、感傷に浸るように眉を寄せて、私の顔を見つめる。昴の頬も耳も真っ赤だ。
 昴、お酒めちゃくちゃ弱いじゃん。
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