きみと、まるはだかの恋
「えっと、それは、寂しいってこと?」

 この状況につけこむようにして尋ねる。彼が少しだけ私のほうに身を寄せる。自分もビールを飲んでいるけれど、彼の吐息からお酒の匂いがぷんぷん漂う。

「……そうかも」

 こてん、と私の肩に昴の頭が乗っかった。心臓の音がかつてないほど大きくなっていく。ついでにドクドクと激しく脈打つ。 
 ど、どうしたの昴っ。
 ちょっと酔っ払いすぎじゃない!?
 私は自分の左肩に乗っている昴の頭をじっと見つめた。さらさらの髪の毛が首筋に触れてくすぐったい。

「昴——」

 私も酔ってるのかな。たった一杯で? 彼が「ん?」と返事をする。だけど、そのあとには言葉が続かなかった。
 彼の顔を覗き込むと、すでに寝てしまっていた。

「寝ちゃったか」
 
 相当疲れたんだろう。昼間は農作業をして、夜はツアーコンダクターをして。そりゃ、クタクタになるに決まっている。
 私は、昴の手からビールの缶をそっと抜いて、そのまま彼をソファに寝かせようかと思った。でもその前にふと、自分の中の恋心が揺れた。
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