クールな王子様からの溺愛なんて、聞いてません!!
ケーキより甘い時間
「どうしよう……」
綿谷くんの家の前。
紙袋を握る手のひらは、ずっと前から汗ばみっぱなしだった。
今日は綿谷くんの誕生日。
練習に練習を重ねて、ようやく形になった手作りケーキ。
ここまで来たのに、あと一歩の勇気が出ない。
でも、このまま帰るなんて絶対できないし…
「……よし」
息を吸い込んで、チャイムを押した。
指先が震えて、押した瞬間、心臓が飛び上がる。
カチャリ、と鍵が回る音。
そして、玄関の隙間から綿谷くんの顔がのぞいた。
「……華子?」