クールな王子様からの溺愛なんて、聞いてません!!
ふわふわとした高い声に、俺は完全に動きを止めた。
俺の目の前を通り過ぎていく、ひとりの女子。
視界に入ったその存在に、俺は目を見開く。
……間違いない。間違えるはずが、ない。
毎日のように思い出していたやつが、そこにいた。
「なんだ、坂本ちゃんも一緒だったのか」
琢磨の言葉に、俺はぱっとそちらを見る。
「お前、知り合いなのか?」
「ああ、日向のこと?俺の幼馴染なんだよ。…なんかあいつ、高校入った途端に急に可愛くなってさー」
「違う。お前の幼馴染のことじゃねぇよ」
「…はあ?…ああ、坂本ちゃんのことか?俺と日向と坂本ちゃん、おんなじ中学なんだよ。ま、俺は坂本ちゃんとあんま関わったことないけどな」
俺が会いたくて仕方なかった存在を知るやつが、こんなに近くにいたとは、思ってもいなかった。