クールな王子様からの溺愛なんて、聞いてません!!
『趣味が読書とか、暗っ!やっぱハナコじゃん』
クスクス声が、どっとした笑い声に変わる。
私の頭は真っ白になって、その後のことはよく覚えていない。
結局、その日から中里さんは私のことを"ハナコ"と呼ぶようになった。
大きくなるにつれて自分の名前が自分に合っていないんじゃないかと薄々思うようにはなっていたけど…
そんな出来事があってからは、もっと気にするようになってしまった。
『花のように華やかで、まわりをやさしく照らす子になってほしい、そんな願いを込めて付けたのよ』
なんて、ずっと前にお母さんは言っていたけど…
自己主張が苦手で、内気で地味な私に、“華やかさ”はどこにも見当たらない。
そんなことを思うようになってから、いつしか自分の名前がちょっとしたコンプレックスに感じるようになっていた。