クールな王子様からの溺愛なんて、聞いてません!!


もぐもぐとハンバーグを頬張る綿谷くんの様子に小さく笑って、私はとにかく広すぎるリビングへと視線を移す。


こんな大きな家に、綿谷くんひとりきりで……寂しくないのかな…


「綿谷くんのご両親は、出張とか多いんですか?」


「…まあ、両親つうか。俺んち、母親いないから、父親とふたり。でも親父は海外に行ってることが多いし、年に数回しか帰ってこない」


表情を変えることなく、淡々と告げる綿谷くん。


あまりにも慣れた様子で、こちらの胸が少しだけ痛くなる。


「じゃあ綿谷くんの誕生日とかに、お父さんは帰ってきたりは…?」


「ない」


「…そうなんですか」


私が綿谷くんなら、ひとりの生活なんて心細くてやっていけない。




< 82 / 174 >

この作品をシェア

pagetop