純愛初夜、次期当主は初恋妻を一途な独占愛で貫きたい。
第8章 真実
翌朝、千暁さまの家のリビング。
深く沈み込むソファに座った私は、両手で母さんの形見のラピスラズリのストラップをぎゅっと握りしめていた。硬質な石の感触が、胸の奥に広がる不安を少しだけ支えてくれる気がした。
さっき鳴ったインターフォンの音が、まだ耳の奥で反響している。誰もがただの来客を知らせる音だと受け流すだろう。けれど私にとっては、人生を変える予感をもたらす音に思えた。
来訪者の名は、藤司佑。お母さんの弟。つまり、私にとっての叔父さまだ。
初めて会うからどんな人なのか想像がつかない。
母に似ているだろうか、それとも全く違うのだろうか。胸の奥で鼓動が早鐘を打つ。千暁さまが迎えに行っているのでリビングには私一人。
この静かさが煎茶の入ったグラスを持つ手が少しだけ震えていた。
足音が聞こえ、ドアが開く。
「失礼します」
穏やかな声とともに、スーツ姿の男性がリビングに現れた。
五十代半ばだろうか。きちんと整えられたグレー混じりの髪、落ち着いた眼差し。どこか、お母さんに似た、柔らかな顔立ちだった。
胸の奥が熱くなる。――この人が、私の叔父さん。お母さんの弟なのか。