三年目の別離、そして――
第三章「噂と嫉妬」
週刊誌の記事は、二度目の再会からわずか数日後に出た。
――『元社長夫人・沙羅、映画プロデューサー神谷と密会?』
ページいっぱいに載せられた写真は、レストランの個室を出る私と神谷の姿。
神谷が私の腰に手を回しているように見える瞬間が切り取られていた。
「……最悪」
記事をテーブルに叩きつけると、向かいの葵が肩をすくめた。
「まぁ、こういうのは撮られる側が悪いって言われるんだよね。たとえ無実でも」
「無実って……本当に何もなかったのよ」
「わかってる。でも司さんは?」
名前を出され、胸の奥がざわつく。
司はこれを見ただろうか。
怒るのか、それとも……無関心でいるのか。
その夜、スマートフォンにメッセージが届いた。
差出人は、司。
『今夜、時間を作れ』
短い命令文。
理由も説明もない。
迷った末、指定されたホテルラウンジに向かった。
重厚なドアを開けると、最奥の席に司がいた。
深い藍色のスーツに身を包み、グラスを手にしている。
その横には、見知らぬ女性――噂で聞いたことのある、彼の“愛人”とされる美香がいた。
心臓がきゅっと縮む。
私を呼び出しておいて、なぜ彼女と一緒にいるの。
「来たな。座れ」
感情を読み取れない声。
私は美香の隣に腰掛けた。
彼女は微笑み、グラスを差し出す。
「初めまして、沙羅さん。お会いできて光栄です」
「……こちらこそ」
笑顔を作るのが精一杯だった。
「この記事について説明しろ」
司がテーブルに週刊誌を置く。
私は深呼吸して、事実を淡々と話した。
「神谷さんとは仕事の話をしていただけ。腰に手を回されたのは、あくまで挨拶の一環」
「挨拶、ね」
低く呟き、司は氷を揺らす。
その目は、静かに怒りを孕んでいた。
「……お前は、本当に俺を苛立たせる天才だ」
「何それ。離婚したんだから、私が誰と会っても――」
「関係ないと、まだ言うのか?」
言葉を被せられ、息が詰まる。
目が離せなかった。
彼の声の奥に、嫉妬の熱が滲んでいる。
翌日、別の噂が流れた。
――『篠宮社長、元妻を呼び出し修羅場』
どうやらラウンジにいた誰かが、私と司、美香が同席していたことを面白おかしく書き込んだらしい。
葵からの電話は開口一番、ため息だった。
「もう、完全にゴシップの標的だね」
「……慣れてきたわ」
「慣れないでよ。あの人、わざと美香と一緒にいたんじゃない?」
「……」
反論できなかった。
もしそうなら、それは私への牽制か、それとも本当に彼女と……。
数日後、神谷からメッセージが届いた。
『この前の件、大丈夫だった? もし良ければ気晴らしに食事でも』
迷ったが、承諾した。
ホテルのバーで軽く飲んでいると、不意に背後から低い声が響いた。
「ずいぶん楽しそうだな」
振り向けば、司が立っていた。
視線は私ではなく、神谷に向けられている。
その鋭さに、神谷が軽く笑ってグラスを置いた。
「これはこれは。社長、元奥様と偶然お会いしましてね」
「偶然? ……俺にはそうは見えない」
司の言葉に、場の空気が凍る。
私は慌てて立ち上がり、二人の間に入った。
「もうやめて。ここは仕事の場じゃないでしょ」
司の瞳が、静かに私を捉える。
そこには、怒りと、そして――どうしようもない嫉妬が混じっていた。
――『元社長夫人・沙羅、映画プロデューサー神谷と密会?』
ページいっぱいに載せられた写真は、レストランの個室を出る私と神谷の姿。
神谷が私の腰に手を回しているように見える瞬間が切り取られていた。
「……最悪」
記事をテーブルに叩きつけると、向かいの葵が肩をすくめた。
「まぁ、こういうのは撮られる側が悪いって言われるんだよね。たとえ無実でも」
「無実って……本当に何もなかったのよ」
「わかってる。でも司さんは?」
名前を出され、胸の奥がざわつく。
司はこれを見ただろうか。
怒るのか、それとも……無関心でいるのか。
その夜、スマートフォンにメッセージが届いた。
差出人は、司。
『今夜、時間を作れ』
短い命令文。
理由も説明もない。
迷った末、指定されたホテルラウンジに向かった。
重厚なドアを開けると、最奥の席に司がいた。
深い藍色のスーツに身を包み、グラスを手にしている。
その横には、見知らぬ女性――噂で聞いたことのある、彼の“愛人”とされる美香がいた。
心臓がきゅっと縮む。
私を呼び出しておいて、なぜ彼女と一緒にいるの。
「来たな。座れ」
感情を読み取れない声。
私は美香の隣に腰掛けた。
彼女は微笑み、グラスを差し出す。
「初めまして、沙羅さん。お会いできて光栄です」
「……こちらこそ」
笑顔を作るのが精一杯だった。
「この記事について説明しろ」
司がテーブルに週刊誌を置く。
私は深呼吸して、事実を淡々と話した。
「神谷さんとは仕事の話をしていただけ。腰に手を回されたのは、あくまで挨拶の一環」
「挨拶、ね」
低く呟き、司は氷を揺らす。
その目は、静かに怒りを孕んでいた。
「……お前は、本当に俺を苛立たせる天才だ」
「何それ。離婚したんだから、私が誰と会っても――」
「関係ないと、まだ言うのか?」
言葉を被せられ、息が詰まる。
目が離せなかった。
彼の声の奥に、嫉妬の熱が滲んでいる。
翌日、別の噂が流れた。
――『篠宮社長、元妻を呼び出し修羅場』
どうやらラウンジにいた誰かが、私と司、美香が同席していたことを面白おかしく書き込んだらしい。
葵からの電話は開口一番、ため息だった。
「もう、完全にゴシップの標的だね」
「……慣れてきたわ」
「慣れないでよ。あの人、わざと美香と一緒にいたんじゃない?」
「……」
反論できなかった。
もしそうなら、それは私への牽制か、それとも本当に彼女と……。
数日後、神谷からメッセージが届いた。
『この前の件、大丈夫だった? もし良ければ気晴らしに食事でも』
迷ったが、承諾した。
ホテルのバーで軽く飲んでいると、不意に背後から低い声が響いた。
「ずいぶん楽しそうだな」
振り向けば、司が立っていた。
視線は私ではなく、神谷に向けられている。
その鋭さに、神谷が軽く笑ってグラスを置いた。
「これはこれは。社長、元奥様と偶然お会いしましてね」
「偶然? ……俺にはそうは見えない」
司の言葉に、場の空気が凍る。
私は慌てて立ち上がり、二人の間に入った。
「もうやめて。ここは仕事の場じゃないでしょ」
司の瞳が、静かに私を捉える。
そこには、怒りと、そして――どうしようもない嫉妬が混じっていた。