キミノオト

「別れたくない。俺には海音が必要なんだ」

苦しそうな声が私の心を揺さぶる。

私だって、そばにいたいよ。

「ごめんなさい。それはできない」

「俺のことが嫌いになった?」

そんなわけない。

大好きに決まってる。

「うん。もう好きじゃない」

ずるい言い方かもしれないけど、嫌いなんて言えない。

中途半端でごめんね。

「じゃあなんでそんな目で俺を見るの?」

「え?」

「俺のことが大好きって目」

焦って顔を背ける。

しまった。

これじゃあ大好きって認めてるのと一緒だ。

「ほら、図星だった」

この人にはきっと勝てないし嘘もつけない。

小さくため息をつく。

「もう起こってしまったことはなかったことにはできない。でも、未来のことは変えられるよ」

「たとえば?」

納得してくれるかはわからないけど。

「きいてたならわかってると思うけど、記事のこと、完全に私のせいだった。私なんかと一緒にいると、また迷惑をかけてしまうかもしれない」

「その迷惑って、何?」

何とは?

「俺にとっては、海音が側に居ないことがストレスで大迷惑なんだけど」

「え?」

「それに、俺らのファンは思ったより理解あるみたいだよ」

そういって、SNSの画面を見せてくれる。

“本気の恋をしてるからこそ、あんな素敵な曲が作れるんだね!”

“熱愛ってきくとちょっとショックだけど、陽貴の曲が好きなのは変わらんし。これからも応援してる”

“一般人女性って!彼女うらやましすぎる!!”

“アイドルじゃないし、恋愛は自由でしょ”

そこに書かれていたのは、私が見た時とは打って変わってポジティブな反応ばかり。

もちろん、中にはネガティブなものもあったけれど、思っていた以上に肯定的だった。
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