キミノオト

「幸せ過ぎて曲できちゃった」

マジかこの人。

天才なのは知ってたけど、そんなことある?

今まで普通に会話してましたよね?

「ごめん。この曲は形に残したい。ちょっと作業部屋こもるね」

陽貴君は誰かといる時とか何かしている時は、新しいフレーズが聴こえてきても形にしないことが多い。

それを形にしたいってことは、何か特別に感じるものがあるんだろう。

そもそも私は陽貴君の作る楽曲のファンで、誰よりも応援してるんだから謝る必要はないんだけど。

「もちろんだよ!頑張ってね」

そういって、お見送りのキス。

驚いたような顔がみるみる嬉しそうに緩んでいく。

「すぐ終わらせてくるから。今日は記念にディナーに行こう」

それだけ言い残して、ダッシュでリビングを出ていく背中を見送る。

つらいことはたくさんあったけれど、乗り越えた先にはこんな幸せが待っていた。

幸せになっちゃいけない人なんていない。

これからは、つらいことがあっても、その先の幸せのために前を向いて生きていきたい。

神様、私たちを出会わせてくれてありがとうございます。

絶対この人を幸せにすると誓います。

だからどうかこれからも見守っていてください。

決意する私の耳に心地よく届くのは、作業部屋から微かに漏れる音楽。

ゆったりだけどポップな曲調。

はやく完成した楽曲が聴きたい。

きっと完成したらトリノコシのメンバーと一緒に一番に聴かせてくれるだろう。

これからもキミノオトを一番近くで聴かせてね。

END
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