休暇中の御曹司と出会ったら、愛され過ぎてもう無理です。
いつの間にか料理はメインのパスタが運ばれて来ていた。

そろそろだよね……そろそろ返事をしないと。

気持ちはもう固まっていたはずなのに、上手く言葉が出てこない。

あんなにサラッと私に気持ちを伝えてくれていたように感じた古賀さんも本当は緊張していたのだろうか。

それに告白を受けたら……私と古賀さんは付き合うことになるんだよね?

古賀さんは古賀グループの御曹司で、もう会社を継ぐ人。

あれ、ちゃんと考えれば私って釣り合ってないよね?

それに別に特別可愛いわけでもないし。

服はセールの時に多めに買うタイプで、ゴミ出しの時はパジャマ。

返事をしようと思った瞬間、頭を巡るのはそんな弱気な感情や意気地なしな弱音ばかり。

古賀さんは「切り替えて楽しむ」私が格好良いって言ってくれたのに、そんな自分すら今の私には感じられない。




でも、何故か古賀さんには全てお見通しだった。




「夏奈ちゃん。今日の朝、俺が言ったこと覚えてる?」

「え?」





「切り替えて楽しむ夏奈ちゃんを『応援したい』って言ったんだ。出来ない時があっても、俺が支える。不安を取り除くのだって俺も手伝う」

「俺だっていつも駆け引き上手な訳じゃないし、弱音も吐けば、格好悪い時だってある。でも、そんな時も『あー、明日から頑張れたら良いな』『切り替えられたら良いな』って思う。夏奈ちゃんと一緒だよ」

「前に夏奈ちゃんが『どんなことでも全力で楽しみたいから……進むんです』って言った。元彼と別れて『切り替えて楽しめる自分でありたい』って思って、俺の休日が良くなるように勇気を出して本を貸してくれる。それに俺を待たせたと思ったら今度は夏奈ちゃんが早起きしてくれて、俺のおすすめのお店を教えたら今度は夏奈ちゃんのおすすめのお店に連れて行ってくれる。夏奈ちゃん、何度だって伝えるよ」






「夏奈ちゃんは最高に格好良くて可愛い。愛してるよ」






私は古賀さんの話のどこから涙を溢していたのだろう。

分からないけれど、今もう私の顔は涙でぐちゃぐちゃで。
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