休暇中の御曹司と出会ったら、愛され過ぎてもう無理です。

しかし、古賀さんは案外優しい人だった。

「さっきの羨ましいが失礼だと思ったなら、今度の休みに俺におすすめの本でも教えて」

「……」

「夏奈ちゃん？」

「なんか分からないですけれど、古賀さんも変な人ですね？　だって私のひさしぶりの休みである今日は邪魔しないように『今度の休み』っていうし、おすすめの本を教える用事で適度に距離を取ってくれる」

私はつい「ふふっ」と笑ってしまった。

だって私が気にしないように、古賀さんも軽く笑って「本を教えて」と言ってくれたから。



「冗談でも悪人の真似をするなら、もっと上手にしないとですよ。それじゃあ、誰も引っかからないですよ？」




その瞬間に私は午前中に映画の予約を取っていたことを思い出した。

「すみません！　私、そろそろ戻ります……！」

私が部屋に戻ろうとすると、何故か私の手首を古賀さんがパシッと掴んだ。