令和恋日和。 ~触れられない距離に恋をして~
第12話 小さな誤解からのすれ違い
平日の夜、吉川芙美は仕事帰りの電車に揺られながら、スマートフォンの画面に目を留めた。都会の光が窓の外を流れ、車内の喧騒が遠くに感じられる中、彼女の心は一瞬でざわついた。
侑のSNSに、女性と写っている写真が投稿されていた。レストランのような場所で楽しそうに笑う侑と、見知らぬ女性。二人の笑顔が、まるで親しげに見えた。芙美の胸は、ぎゅっと締め付けられるような感覚に襲われた。
――なんで……? 誰なの?
頭の中で何度もその写真が蘇り、心が落ち着かない。前は話に聞いただけだったから彼の言葉だけを信じられた。だけど侑と過ごした時間や家族に紹介した日の温かな時間が、彼女の心に刻まれている。それなのに、この一枚の写真が、まるで小さな棘のように胸に刺さった。
侑との関係が深まってきた今だからこそ、こんな小さなことが大きな不安を呼び起こすのかもしれない。
昔を思い出してしまう。だけど――ただの誤解かもしれない。でも……とても怖い。
電車が駅に着くたびに、乗客のざわめきが耳に届くが、芙美の心は別の世界にいた。彼女は、スマホを握りしめながら、深呼吸して気持ちを落ち着けようとした。侑を信じたい。なのに、胸の奥にわだかまるモヤモヤが、簡単には消えてくれなかった。