甘く苦く君を思う
彼はケーキの箱を大事そうに抱えると店の外に出ていった。
私は何も言えず彼の後ろ姿を見つめていると、不運な偶然にも幸子さんが渚と手を繋ぎ帰ってきてしまう。そして彼とすれ違いハッとする。
彼に気づかれませんように、と祈るが店に入った瞬間「ただいまー」と渚の大きな声がした。
その声に昴さんは後ろを振り返ると目を見開いていた。
店のガラスドアの外からとはいえ、彼に渚の声が聞こえたはず。
渚の後ろ姿をじっと見つめていた。そして私の顔を見つめてきた。
彼は娘の存在に気がついてしまっただろうか。彼の視線が渚の後ろ姿に向いた瞬間、まるで心臓を掴まれたように動けなくなってしまった。彼からの視線を外すことができない。ようやく視線を逸らすと小さな声で奥に入るよう声をかけた。
渚の後ろ姿しか見られていないはずなのに、彼に言わずに産んでしまった娘の存在を知られてしまったと胸が締める蹴られ、苦しくなる。
知られたくなかった……。
渚はいつもと変わらず、幸子さんと歌を可愛い声で歌を歌いながらご機嫌で奥に入ってくる。その様子をいつまでも見ている彼の姿に身体がこわばり、手が震える。
彼の両親に知られたらと思うと急に背筋が冷たくなる。あの頃流された噂に、私は仕事も住むところも彼も失った。
子供のいる今どんな嫌がらせをされるのかと思うと怖くてたまらない。
渚が奥に入り、見えなくなると彼は傘を差し帰っていった。
私は何も言えず彼の後ろ姿を見つめていると、不運な偶然にも幸子さんが渚と手を繋ぎ帰ってきてしまう。そして彼とすれ違いハッとする。
彼に気づかれませんように、と祈るが店に入った瞬間「ただいまー」と渚の大きな声がした。
その声に昴さんは後ろを振り返ると目を見開いていた。
店のガラスドアの外からとはいえ、彼に渚の声が聞こえたはず。
渚の後ろ姿をじっと見つめていた。そして私の顔を見つめてきた。
彼は娘の存在に気がついてしまっただろうか。彼の視線が渚の後ろ姿に向いた瞬間、まるで心臓を掴まれたように動けなくなってしまった。彼からの視線を外すことができない。ようやく視線を逸らすと小さな声で奥に入るよう声をかけた。
渚の後ろ姿しか見られていないはずなのに、彼に言わずに産んでしまった娘の存在を知られてしまったと胸が締める蹴られ、苦しくなる。
知られたくなかった……。
渚はいつもと変わらず、幸子さんと歌を可愛い声で歌を歌いながらご機嫌で奥に入ってくる。その様子をいつまでも見ている彼の姿に身体がこわばり、手が震える。
彼の両親に知られたらと思うと急に背筋が冷たくなる。あの頃流された噂に、私は仕事も住むところも彼も失った。
子供のいる今どんな嫌がらせをされるのかと思うと怖くてたまらない。
渚が奥に入り、見えなくなると彼は傘を差し帰っていった。