英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 契約という言葉が引っかかったが、本来は妻ではなかったわたしが代わりを務めるという意味では、契約といってもいいのかもしれない。

 そんなふうに整理しながら顔を上げたのだが、続く彼の言葉に表情が凍りついた。

「無理に縛りつけるつもりはないから、安心してほしい。近く王都で開かれる式典があり、そのあとに離婚しようという話になっている。そのあたりは記憶にあるか?」

 思わず言葉に詰まってしまう。どうやら彼の中では、離婚は決定事項のまま。あらかじめ話をつけていたとおり、わたしと縁を切るつもりのようだ。

 今さら妻のままでいさせてほしい、とは言えなかった。

 元より政略から始まった望まれぬ縁組だということはわかっている。せっかくまとまった別れ話を覆してまで、正体不明の女を保護する義理はない。それこそ再婚でもしたほうが彼にとっては有利に働くだろう。
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