英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 その夜は、目を閉じていても浮かび上がる残像を、朝まで振り払うことができなかった。

 ――翌朝、姫からの贈り物だといって、ルビーのついたブレスレットが届けられた。使うことはまずないが、突き返す勇気もないし、処分することもできない。

 焦げたようにひりつく気持ちとともに、引き出しの奥に乱暴にしまい込んだ。

     *

 イレーヌ姫の呼び出しを受けたあの夜、ルシウス様と彼女がどんな話をしたのか気になって仕方なかったが、当人たちに直接聞けるような度胸は持ち合わせていない。

 顔を見にいく勇気すら持てないうちに、郊外に手強い魔獣が出現したとの報を受けたルシウス様は、騎士団を召集し討伐に出かけてしまった。
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