英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 混乱したわたしは、ドンと彼の胸を突き放していた。瞬時に頭も冷えて、はっと顔を上げると、驚きに見開かれた青い瞳と視線がぶつかる。

 ――気まずい沈黙が流れた。

「お疲れのところ、申し訳ありませんでした。ゆっくりお休みください」

 取り繕うように言葉を並べて、逃げるように部屋をあとにする。うしろ手に扉を閉めると、知らず深い溜息が漏れた。少しの間、胸を押さえてその場に立ち尽くす。そうしていないと、思いが溢れてしまいそうだったから。

 彼はなぜ抱きしめてくれたのだろう。わたしが妻だから?
 少なからず好意を持ってくれているのだとしたら嬉しい。けれど、あの女性の影が、先日の光景が、どうしても気になってしまう。期待と不安がせめぎ合い、心が苦しくて――。

 そして、気づいてしまった。
 以前よりもずっと強く、彼に惹かれているということに。
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