英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 それから間もなく彼は机に預けていた体を起こし、まっすぐにこちらを見ながら足を踏み出してきた。

(え、待って、こっちに来るの……!? なにをするつもり?)

 おののき動けずにいるうちに、脅威の八頭身がズームアップされる。
 長身の彼とは頭ふたつ分くらいの身長差があって、前に立たれるとかなりの威圧感がある。
 ぎゅっと身を縮め、強張った視線を向けると、男性は不思議そうに首を傾げた。

「どうした。もう吠えないのか? 気性が嵐のように変わる、忙しい女だな」

 そんな冷たいセリフにも、ドキッとしてしまうのは相手の顔面が良すぎるせい。

 彼の表情に気を取られ、立ち尽くすばかりのわたしの肩に大きな手が置かれたと思うと、そこに軽く力が込められた。くるりと方向転換させられ、背中を押されて、あれよあれよという間に部屋の外へと押し出されてしまう。

 されるがままに廊下に出ると、すぐそばに待機しているふたりの人物が目に入った。
 執事のような服装をした双子と思しき少年と少女――彼らは、わたしの背後にいる男性に向かってうやうやしく頭を下げた。

「ルシウス様」
「ご命令をどうぞ」
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