英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
「ルシウス様? ……んっ」

 皮膚の薄いところにそっと唇を押しつけられて、反射的に体が跳ねる。変な声まで出てしまい、頭に血が上った。

 首筋に口づけた彼はそこに顔を伏せたまま、ひと言を呟いた。

「消毒、だ」
「は、はい……」

 おとなしく身を任せたまま待っていると、今度は両腕がしっかりと体に回されて、深く抱き込まれた。

「怖い思いをさせたな」

 いたわりの言葉に目の奥がツンとする。
 心に温かいものが広がるのを感じていると、彼の雰囲気が打って変わり、悔恨を滲ませた低い声が耳に差し込まれた。

「あの男、あの場で殺してやればよかった。取り調べを継続するため、生かしておいたが……煮えるような気持ちが増すばかりだ」

 抱きしめる力が強くなる。彼の心配の大きさを知り、胸が詰まった。
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