英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 ルシウス様は出迎えを怠ったくらいで怒るような人ではないと思うのだが、いったいどうしたというのだろう。
 不思議に思っていると、彼はピリピリとした空気を背負ったまま、まずヒルダさんに指示を飛ばした。

「俺はこの者たちに話がある。ヒルダ、おまえはアレクシアの部屋に行き、湯あみを手伝ってやってくれ」
「かしこまりました」

 彼が先に行けと言うのなら、その意向に従ったほうがよいだろう。それに早く体を清めたいと思っていたから、先回りの心配りもありがたい。

 わたしの前ではいつも不遜な態度を取っていたメイド長が、見る影もなくうつむき震えている横をすり抜けて、ヒルダさんとともに館内を進んだ。

 移動しながらわたしの格好をちらりと見たヒルダさんは、ただ静かに、いたわりの言葉をかけてくれた。

「大変な目に遭われたようですね。……けれどもう、すべてが解決するかと」
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