英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
「ありがとう。でも、解決って……?」

 そう尋ねたところで、廊下の先から近づいてくる話し声を耳にし、会話を閉じる。
 やがて角を曲がって姿を現したのは、イレーヌ姫と侍女がひとり――いつも連れている二人目の侍女はいないようだ。

 主に迎賓館にいるはずの姫がなぜ本館にと考えてみると、時間的に見て晩餐の頃合いだと気づいた。恒例によりメインダイニングに招かれたものの、ルシウス様はわたしを探して街へ出たため食堂には現れず、彼女はそのままひとりで食事を取っていたのだろう。

 嫌なタイミングで行き会ってしまったが、引き返すわけにもいかない。その場に立ち止まっていると、姫のほうはこちらを見つけるや否や、躊躇なく足を進めてきた。

 数歩の距離を保って対面すると、すぐさまぶしつけな視線が全身に降りかかってくる。くいっと傾けられた姫の唇から、なんとも嫌味な声が飛び出した。
< 222 / 398 >

この作品をシェア

pagetop