英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
 護衛にしては立派だなと思いながら隣を見ると、ルシウス様も驚いた表情を浮かべている。警戒するような気配は見られないから、おそらく知り合いなのだろう。

 馬から降りた青年は、すぐさま馬車に近づき、タラップの脇に立った。
 馬車の扉が開いて、つばの大きな帽子を被った年配の女性が顔を出す。青年に手を取られ、地面に降り立ったその人こそ、グレイス・レオパルド前辺境伯夫人。ルシウス様の母君だと、ひと目で理解した。

 立ち姿は気高く、紺色のドレスは重厚で気品に溢れている。巻き上げた髪は明るい栗色をしていて、瞳にはルシウス様そっくりの透き通った青い光をたたえ、美しく輝いていた。

 精悍な騎士と麗しい貴婦人という、妙に迫力のある組み合わせの男女が、石張りのアプローチの上を進んでくる。青年が気さくな笑顔を浮かべ、ルシウス様に声をかけた。
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