英雄の妻に転生しましたが、離縁されるようです ~旦那様、悪妻の私を愛さないでください~
     *

 少年のあとをついて洋館の廊下を進みながら、記憶を整理した。

(たしかわたしは、公園で拾った猫ちゃんを追いかけていたはずよ……。そうして道路に飛び出したら、トラックが迫ってきて……)

 考えられるのは、こちらが驚いて気絶したところを、何者かによってこの場所へ運ばれてきたということ。
 警察や病院といった正当な状況に置かれていないことに一抹の不安を覚える。もしや相手方は、事故を起こした事実をうやむやにしようとしているのだろうか。

(まさか運転していたのはさっきの男の人……? って、それはないわよね)

 貴族のような服を着た男性とトラックの運転手ではあまりにイメージがそぐわない。とすると轢き逃げされたところを、通りがかった彼によって拾われた可能性もあるのではないか。

 真っ暗な窓の外に目をやれば、物事を突き詰めるには遅い時間だと知れる。救助されたうえ、ひと晩の宿まで提供してもらえるのだとしたら、むしろお礼を言うべきだったのかもしれない。
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